オーナーインタビュー #05
OWNER INTERVIEW #05
株式会社グリフィン
代表取締役 上妻英一さん
観戦位置も社員に“一任”する福利厚生
委員会の設置で生まれる絆、4席に集まる感謝の声
東京・神田淡路町のオフィスを出る。電車に乗って、2、3駅。歩く時間を入れても15分ほどで、東京ドームの屋根が見えてくる。2002年に創業した株式会社グリフィンは、環境、物流、金融と幅広い業界のシステム開発・保守・コンサルティングを軸に、展示会の出展をサポートするプロモーション事業も手がける。上妻英一代表取締役が会社で大切にしてきたのは、社員に喜んでもらうこと。その想いの受け皿が、ドームの4つの座席だった。
始まりは、経営者仲間に誘われた一夜の観戦だった。三塁側の席で味わった迫力が忘れられず、シーズンシート担当者を紹介してもらった。聞けば費用は思ったより高くはない。会社からの近さもひとつの要因となった。「社員に喜んでもらうイベントは、ずっと考えていましたから」。
誘ってくれた知人の会社は営業や接待が主で、余った分を社員に回す使い方だった。だが上妻代表は、順番を逆にした。社員主体でいい——。まず全社員に開放し、余った分を活動に利用すると決めた。福利厚生こそが本命だった。
運用は、社員の有志が集まった約15人からなる“イベント企画委員会”にすべて任せている。社内ネットで月ごとに空き日程を告知し、1試合4席を配る。決まりごとは「最低1人は社員が参加すること」だけで、連れは家族でも友人でも子どもでもいい。チケットはメールで届く。仕事帰りにふらっと向かえる距離だから応募も気軽で、月の試合はほぼ埋まる。
人気カードには抽選の規程もあるが、実際は第2希望までで収まることがほとんどだという。長嶋茂雄さんに憧れて巨人ファンになった代表にも優先枠はない。「第一次募集は全員が対象。優先順位はないです」。使いたければ、社長も空いた日を狙って申し込む。ルールは同じだ。
社員の使い方は、代表の想像を超えていった。ある社員は「親御さんが巨人好きで声をかけたい」と4つの席が、親孝行のきっかけになった。交流戦の時期には、巨人ファンとパ・リーグファンの社員が連れ立って観戦し、互いの応援で盛り上がる。同じ職場にいながら知らなかった顔が、球場で見えてくる。
上妻代表から見るドームの魅力は具体的だ。「応援はすごく大きな音がするし、打球の音もね。それから選手のスピードとか体のキレ。あれはテレビでは全然わからない。体格がいいのに、すごくスラっとしているんですよ」。
感謝の声も届いている。「みんな喜んでいて、自分だけじゃなく、親とか友達から感謝されたと言うんです。そういう場を作れるのは、すごくいい」。社員の喜びが家族へ、友人へと広がっていく。その循環が福利厚生として大きな手応えだ。来季の席も、また社員たちの話し合いで決まる。任せて、喜ばれる。シーズンシートの4席は、これからも社員の手で育っていく。